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 延命治療の決断
  2008年6月6日(金)

  症状も安定してきたので今日からリカバリー室から、また個室に移った。

  食べ物を飲み込むのが難しく、病院の普通食が食べれないので鼻からの
  流動食に切り替えることになった。

  流動食用のチューブが鼻から胃に通される。
  そのチューブが痛々しい。
  でもこれで、流動食が摂れれば空腹感が少しは治まるだろう。
  

  午後に1回目の流動食を始めた。
  最初は様子を診ながらゆっくりと入れていくらしい。

  流動食を摂っているとき、ママの方のお爺ちゃん&お婆ちゃん、そして兄が
  お見舞いにやってきた。
  本来なら両親と祖父母しか面会できないのだけれど、個室だし、なにより
  陸玖に残された時間が少ないことをみんな知っているので兄の面会も
  すんなりとOKになった。

  腕には点滴、頭はシャント交換の手術の傷跡、そして鼻に流動食用のチューブ。
  変わり果てた陸玖の姿を見て、みんなも驚きが隠せない。
  それでも、陸玖は意識が無いわけじゃないから、こちらからの話掛けも
  解るし、ちゃんと反応もある。

  みんなが「陸玖、会いに来たよ〜」と明るく声を掛けてくれる。

  


  流動食を始めて暫くすると、陸玖の心拍数が上がり始めた。
  陸玖にはリカバリー室で付けていた、心拍数、血圧、呼吸数を常に監視できる
  ようにモニターが個室に移っても付けられている。

  看護師さんの話では、慣れない流動食でドキドキしちゃうこともあるという。
  流動食のスピードを調節しながら看護師さんが様子を診る。

  流動食は終わっても、心拍数は上がったまんまだ。
  そのうち陸玖の動きがおかしくなった。
  足を曲げたり延ばしたり、同じ動きを何度も繰り返す。
  ずーと同じ動きをして汗もびっしょりかいている。
  普通じゃないよ!とお婆ちゃん達も言っている。
  看護師さんを呼ぶと血圧を測ったり、瞳孔のチェックをしたりしている。
  けいれんみたいだけど、けいれんみたいに細かい動きではない。
  だけど、手や足をすごい力で動かし続けている。。。

  看護師さんが先生に連絡を取ってくれた。
  確か今日は、五味先生は1階で外来診察をしているはず。。。
  でも、なかなか先生は来ない。
  陸玖の動きはどんどんおかしくなっていく。
  意識ももうろうとしている感じで、私達の声も聞こえているのか解らない。

  どうしよう。。。このままどうかしちゃったら。。。
  急いでパパに電話をする。
  パパもすぐ駆けつけると言っているし、陸玖、頑張って!


  なかなか来ない先生に、ヤキモキしながら私は汗びっしょりの陸玖の汗を
  拭いてあげることぐらいしかできない。

  そして、やっと五味先生が来てくれた。
  すぐに、けいれんを抑える薬を点滴から入れる。
  この薬はちょっと強いらしいので一時的に使うだけらしい。。。
  そして、薬の効果はすぐに現れ陸玖の変な動きも止まった。

  落ち着いて寝ている陸玖の傍で、先生が今後の話をした。

  今日のような様子を診ると、いつまた急変するか解りません。
  腫瘍が呼吸の神経を圧迫するようなことがあれば、呼吸がいつ止まっても
  おかしくない状況です。
  もし、そのような危険になったとき、呼吸器を付けるかどうかの判断を
  しなければなりません。
  ただ、それは明日かもしれないし、1週間後、1ヶ月先かそれは解りません。
  しかし、そのときどうするか今のうちに決めておいて下さい。
  呼吸器を付けるということは延命治療をするということです。
  延命治療は本人も周りの人も辛いものです。
  呼吸器を付け、ただ心臓だけが動いている状態がどれくらい続くか
  解りません。
  そのうち、心臓が止まるのを待っているような気持ちになってしまうと
  身内の方は本当に辛い思いをします。
  
    −−−−  沈黙  −−−−

  だけど、陸玖くんは今までも頑張ってきたし、みんなのために、もう少し
  頑張ってもらってもいいんじゃないでしょうか。。。と五味先生は付け加えた。

  その話を聞いて、私はもちろんお爺ちゃん、お婆ちゃん、兄も涙が止まり
  ません。
  「お父さんが来られたら、よく相談してください」と言って先生は部屋を出て
  行った。

  私達は何も話せず、ただ泣いているだけでした。
  お爺ちゃんもお婆ちゃんの「可哀想。。。可哀想。。。」と泣くばかりです。

  それからすぐ、パパが部屋に入ってきた。
  廊下で五味先生と会ったので、呼吸器の話は聞いたそう。。。
  五味先生はパパと話しながら涙ぐんでいたそうです。

  先生はこうした状況は何度も経験しているでしょうけれど、慣れることは
  決してないんだろうな。。。やっぱり辛いですよね。
  そんな五味先生だから、私達は大事な陸玖の命を信用して任せられ
  たんだよな・・・。と改めて思いました。



  その後、パパとも相談して必要な時がきたら呼吸器を付けてもらうことを
  お願いし、私達は延命治療を選択した。


  答えが出るまで本当に悩みました。
  もし、コレが自分の身だったら、延命治療なんてしないで、あっさり逝かして
  くれ!って感じだけど、陸玖は生きている。
  今までだって、辛い治療もいっぱい絶えて生きるために頑張ってきた。
  陸玖にどうしたいか聞くことはできないけど、私達はまだ陸玖の死を受け
  入れる覚悟なんてできてない。
  こんな状況でも、奇跡が起きることをまだ諦められない。
  大変かもしれないけど、苦しいかもしれないけど、親の勝手かもしれない
  けど、もう少し陸玖に頑張って貰いたい。


  陸玖にとっては酷な選択だったかもしれないけど、それから亡くなるまでの
  約1ヶ月半の時間が、私達の陸玖の死を受け入れるための大切な時間。
  この時間があったから、今こうして陸玖の死を受け入れ、生活していられる
  のかも知れません。

  しかし、この選択に正解はありません。
  呼吸器を付けて、横になっている陸玖の姿を思い出すと、口から管が
  入った状態のまま、1ヶ月近く。苦しかったよね。。。辛かったよね。。。と
  思って、延命治療は陸玖を苦しめてしまっただけなのではと、申し訳なくて
  誤っても誤りきれない後悔に襲われる日もあります。

  どちらにしても、辛く難しい選択です。
  
 



 

プロフィール
2008年7月に愛する5歳の息子を脳腫瘍という病気で亡くしたママです。少しでも他の方のお役に立てたら、そして息子の頑張った姿を知って欲しくて。。。
陸玖の病気が発覚する以前に子育てに関するサイト「Happiness☆誕生〜子育て」を運営していました。陸玖が産まれて5歳までのことが綴られています。良かったら覗いてみてくださいね。
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自治医科大学とちぎ子ども医療センター
セカンドオピニオン・ネットワーク公式サイト
NPO法人 脳腫瘍ネットワーク
 
朝日新聞に掲載されました

2011/1/25〜29の5日間
『患者を生きる』とい欄に、「この子らしく」という陸玖の闘病記録の記事を掲載していただきました。
閲覧はこちらから
 
LINK集
 
広げようリボン運動
ゴールドリボン
小児がんに関する啓発活動や、治療研究などへの経済的支援を求める運動をしています。
   
オレンジリボン
オレンジリボン運動で子ども虐待防止の輪を広げましょう。
子ども虐待防止「オレンジリボン運動」
 
細菌性髄膜炎から子ども達を守りたい
ヒブワクチンってご存知ですか?ワクチンで守れる『いのち』はあります!いのちの格差を無くすためにも現在、ヒブワクチンの定期接種化を求める署名活動をしています。
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